戸田先生の悟り (2)(一回目の悟り)

 戸田先生の 「獄中の悟達」 は、二つあります。
 一回目は、昭和19年3月初旬、開経である 「無量義経徳行品第一」 を読まれていたとき、
 二回目は、同年11月中旬、「法華経従地涌出品第十五」 を読まれて、地涌の菩薩の自覚に立たれました。

 『無量義経徳行品第一』 に、仏の 「其の身」 について説かれた偈(げ) があり、この偈(韻文の形で述べたもの) の部分が、十二行からなり、「……に非ず」 という否定が、三十四もある。何とも、思議し難い経文である。

 それは 「其の身は有に非ず亦無に非ず、因に非ず縁に非ず自他に非ず、方に非ず円に非ず短長に非ず、出に非ず没に非ず生滅に非ず、造に非ず起に非ず為作に非ず、坐に非ず臥に非ず行住に非ず、動に非ず転に非ず閑静に非ず、進に非ず退に非ず安危に非ず、是に非ず非に非ず得失に非ず、彼に非ず此に非ず去来に非ず、青に非ず黄に非ず赤白に非ず、紅に非ず紫種種の色に非ず」 という経文であります。

 戸田先生は、昭和19年元旦を期して、毎日 『日蓮宗聖典』 のなかの白文の法華経を読むことと、日に一万遍以上の題目をあげることを実践し、寒い二か月間で3回読破し、4回目に入った三月初旬。

 戸田城聖は、いまは前三回の時のように、気楽に読みながすことはできなかった。彼の日々の唱題と、いまは法華経を身で読みきろうというすさまじいばかりの気迫が、彼をいつか踏みとどまらせていたのである。
 彼は思った。
 ―― 三十四の 「非」 は、形容ではない。厳として実在する、あるものを解きあかそうとしているのだ。しかし、その実在は、有るのでもない。無いのでもない。…… 四角でもなく、丸くもなく、短くもなく、長くもない、という。…… 動くのでもなく、転がるのでもなく、じっと静かだというのでもない。…… まるで判じものだが、いったいなんだというのだろう。いま、自分に解かっていることは、このような判じものの表現をとらなければ説きあかすことのできない、ある偉大な、眼にうつらない実在が、厳としてあるということである。……
 ………
 戸田城聖は、この十二行の偈を心から納得したいと願った。さもなければ、もう一歩も先へ進まぬと決めた。彼は、法華経に対して背水の陣を張ったのである。その決意は、いわゆる観念の決意ではない。生命の対決であった。
 ………
 彼は、この十二行の意味するものの、確実な実体が存在することを、直観せざるをえなかった。
 彼は唱題を重ねっていった。そして、ただひたすらに、その実体に迫っていった。三十四の 「非」 を一つ一つ思いうかべながら、その三十四の否定のうえに、なおかつ厳として存在する、その実体はいったい何か、と深い深い思索にはいっていた。時間の経過も意識にない。いま、どこにいるかも忘れてしまった。
 彼は突然、あっと息をのんだ。 ――「生命」 という言葉が、脳裏にひらめいたのである。
 彼はその一瞬、不可解な十二行を読みきった。

 
 「生命」 は有に非ず亦無に非ず
 因に非ず縁に非ず自他に非ず
 方に非ず円に非ず短長に非ず
 …………………………………
 紅に非ず紫種種の色に非ず

 
 ―― ここの 「其の身」 とは、まさしく 「生命」 のことではないか。知ってみれば、なんの不可解なことがあるものか。仏とは生命のことなんだ 
 ―― 仏とは生命なんだ 生命の表現なんだ。外にあるものではなく、自分自身の命にあるものだ。いや、外にもある。それは宇宙生命の一実体なんだ
 
 
 戸田先生は、劣悪な極寒の獄舎にあって、命を賭(と)して “仏の本体・本質” ともいうべきものを、解き放し明らかにしてくださいました。このことについて、池田先生は引き続き、次のように述べられています。

 戸田城聖のこの時の悟達の一瞬は、将来、世界の哲学を変貌(へんぼう)せしむるに足る、一瞬であったといってよい。それは、歳月の急速な流れと共に、やがて明らかにされていくにちがいない。
 この折の、彼の明晰(めいせき)な悟達は、仏法を見事に現代に蘇(よみがえ)らせ、近代科学に優に伍して遜色(そんしょく)のないものとした、といえよう。そして、仏法に鮮明な性格と、現代的な理解とを与えたのである。いや、そればかりではない。日蓮大聖人の生命哲学を、あらゆる古今の哲学のうえに位置せしめた、記念すべき強力な発条(ばね)であったというべきではなかろうか。
 法華経には 「生命」 という直截な、なまの言葉はない。それを戸田は、不可解な十二行に秘沈されてきたものが、じつは真の生命それ自体であることを、つきとめたのである。
   (文庫人間革命第四巻・14~19P抜粋)

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谷 建二郎

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北九州市小倉北区に在住 81歳
日蓮仏法と創価思想に関する私の教学的随想

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