靖国と憲法

 国会議員達が集団で、終戦記念日や例大祭に靖国神社を参拝することが、今や恒例行事になった。過去の歴史認識をめぐる不毛な対立による、中韓両国の反発も相変わらず起きている。
 この頃は、わが国の尖閣諸島近海で、中国艦船が領海侵犯をするという憂慮すべき問題も起きている。

 安倍総理は参院選前から、憲法九条改正への意欲を明言していた。
 この前の テレビ番組で、憲法改正について討論会をしていたとの事、私は見ていなかったが、見た友人が今の若者たちが、意外に改正に賛成する者が多かったと言っていた。
 このようなことを思うと、自民党の国会議員達が、あえて反発のなか憲法違反まで犯して、靖国神社の参拝を強行するのは、憲法改正の賛成世論を醸し出したいからではないかと、そのような、うがった見方もして見たくなる。

 安倍総理は前の時、「戦後 レジーム(体制)からの脱却」という スローガンを掲げていた。
 それは、教育基本法を改正して、国のためになる国民の育成を、教育の目的とするものである。
 また、靖国神社を特別扱いにし、その関係を復活させて、将来、国のために命を捨てさせるための施設にしょうとしているのである。かつて “戦没者を祀る靖国神社を国の手で維持しないで、これから先、誰が国のために死ねるか” と発言した、保守系の大物議員もいたのである。
 そして次に、戦争ができる国にするために、憲法改正をしょうとしているのである。憲法改正と靖国神社国家護持は、一体となっているのである。

 そこには、個人よりも国家の価値を優先し大切にする価値観がある。すなわち、“国民のための国家”より、“国家のための国民” であるという転倒せる価値観である。
 権力には魔性がある。「他化自在天」 といって、自分以外のすべてを、自分の手段として利用しょうとする生命の働きである。これは誰人にもある 「元品の無明」 が発動したものだけに、なかなか厄介なものであり、注意する必要がある。

 安倍総理には、戦前の一等国 “大日本帝国” への郷愁があるのではないかと思われる。これが単なる杞憂であれば幸いである。
 わが国は サンフランシスコ講和条約で、東京裁判の結果を受けいれて、国際社会に復帰したわけである。
 “あの裁判は不正義の裁判だ” とか、“平和憲法は アメリカから押し付けられたものだ” とか、片一方の視点から見て、戦後の国際秩序の現状を認めないような、閣僚たちの言動は厳に慎むべきである。
 そのようなことをすれば、アメリカをはじめ、国際世論の反感を買う結果になりかねないのである。

 ところが、否定された筈の過去の神道史観をもって、国の公人が何時までも、靖国神社に参拝していることは、何時までも、中国・韓国から歴史認識の問題を突き付けられ混乱が生じて、国際世論も離れて行きつつあるのである。
 政治指導者たるもの視線は、死者の慰霊という過去のものではなく、生者である国民の福祉・安寧・幸福という、未来に向けられていなければならない。

 戦後70年になんなんとするのに、もういい加減にして、この問題に終止符を打とうではありませんか。
 それには、過去の軍国主義の侵略戦争の反省からして、戦争を精神面で推進した 「靖国神社」 には、今後一切関わらないことである。これが一番の解決策である。
 『立正安国論』 に、「唯偏に謗法(ほうぼう)を悪(にく)むなり、夫れ釈迦の以前仏教は其の罪を斬ると雖も能忍(のうにん)の以後経説は則ち其の施(せ)を止む、然れば則ち四海万邦一切の四衆其の悪に施(ほどこ)さず皆此の善に帰せば何なる難か並び起り何なる災か競い来らん」(30P) と仰せです。
 
 能忍とは釈尊のことである。釈尊以後は、謗法を退治する最直道として “則ち其の施を止む” と、すなわち謗法に対する布施を止めることである。これが、破仏法・破国の根源を断つ要諦である。ゆえに、靖国神社にはいっさい、参拝しない・玉串料も収めない、これが仏法の理にかなった一番よい方法である。

 我が国には、国のために犠牲になられた人々を、公に追悼する施設がありません。これを、一宗教法人である靖国神社に委ねているような状況であるから、いつも 「憲法違反」 の疑念が付きまとうのである。これは、ハッキリと区別させるべきである。
 したがって、私は次のように思っています。
 
 第一に、今後一切、わが国は国家神道の靖国神社・護国神社等と完全に縁を切り、国の公人は参拝しないことを宣言し、実行すべきである。
 第二に、然るべき別の場所に、新しく追悼の施設を作る方法が良いと思います。また、現在ある千鳥ヶ淵戦没者墓苑を、可能ならば拡充しても良いと思います。
 第三に、新しい施設は、誰でも心置きなく追悼でるように無宗派の施設で、碑や モニュメントの類いであるべきだと思います。間違っても、本尊や経題を書写した類いのものを設置しないことである。
 第四に、天皇陛下・総理大臣・外国の使節・その他・国民すべての人が、心から静かに追悼するに相応しいものにしてもらいたいと思います。

 戦後の復興にあたって、平和憲法が果たした役割は多大なものがある。特に、ベトナム戦争や イラク戦争において、一人の戦死者も出さなかったのは、憲法第九条のお蔭である。
 池田先生は、「軍事力等の ハード・パワーの行使も、現代では、国連という システムや、その背後にある国際世論という ソフト・パワーを無視しては不可能である(趣意)」 と述べられています。

 今や時代は、ソフト・パワーが主役の時代である。そうであるのに、わざわざ憲法を変えて、海外派兵を可能にしょうとするのは、時代錯誤・逆コースも甚だしいと言わざるを得ない。
 防衛上に不都合な点があれば、加憲や解釈改正や自衛隊法改正等で対処が可能かどうか、検討して見てはどうかと思う。

 そして、“憲法の前文並びに第九条” は絶対に堅持すべきである。わが国は平和・文化国家に徹すべきである。いたずらに、大国主義になる必要はない。
 平和で環境等すべてに安心・安全で、世の中で一番暮らしやすい国だと、世界中の人々から羨ましがられるような国にして行きたいと思います。 
 追記 : 池田先生は、未来に生きる青少年たちに 『お隣・中国とどう付き合うか?』(青春対話Ⅱ)と言う題で、ご指導されていますのでご参照ください。 (抜粋)  

 名誉会長 国家主義というのは、一種の 「宗教」 なのです。ちょっと難しいかもしれないが。「国」 というものが最高に尊厳であって、国のためなら民衆の命を犠牲にしてもかまわない ―― 「国」 を “神様” にした宗教が 「国家主義」 です。
 このことは、トインビー博士(二十世紀最高の歴史学者)も言われていた。近代の国家主義は、信ずるものがなくなった “心の空白” に、古代の 「集団力への崇拝」 が復活してきたものだ、と。 
 しかし、絶対に国家主義は誤れる宗教です。「国のために人間がいる」 のではない。「人間のために、人間が国をつくった」 のです。これを逆さまにした “転倒の宗教” が国家信仰です。
 牧口先生、戸田先生は、「国家」 の上に 「人間の道」 を置いていた。
 国は大事かも知れないが、人類共通の 「人道」 はもっと大事だ。日本も大切だが、「人類全体」 はもっと大切なんだ、と。
 だから、人殺しなど 「人道」 に背いた場合、自分の国であっても、「悪いものは悪い」 と言っていくべきです。 
 ………
 名誉会長 問題は、その 「公」 がイコール 「国」 にすり替えられていることだ。
前にも言ったが、真実の 「公」 とは 「民衆」 であり、「人類」 です。国は、民衆のため、人類のために仕えるべき、いわば 「公僕」 なんです。
 ともあれ、正しい歴史認識こそ根本です。過去をねじ曲げれば、未来までねじ曲がってしまう。事実は事実として、きちんと見つめなければ、世界の人と対話がなり立たない。ひとりよがりの 「世界の孤児」 になってしまう。
 ………
 名誉会長 若い諸君には、過去の戦争への責任はない。しかし、未来への責任はある。現在への責任もある。
 平和を壊す危険な動きを認めてしまえば、その責任はある。
 「日本人は歴史健忘症」 と、ある国の著名な学者が言った。
 過去のことは、都合の悪いことは、みんな流してしまう ―― 哲学のない、経験を生かせない、軽薄な国民であるということを心配します。
 すぐに傲慢になる。裏を返すと、そこには、確固たる歴史観も哲学もない。
 中国の江沢民主席が言われたように、正しい歴史認識がなければ、将来は必ずまた不幸な、悲惨な歴史を繰り返しかねない。
 したがって、日本の国が、正しく過去の認識をし、反省しなければならない。それをもってこそ、将来の 「新しい歴史」 が、また 「称賛される歴史」 ができあがる。これが根本中の根本です。
 ドイツのユダヤ民族が迫害された。その悪を糾(ただ)すために、最後の最後の、地球の果てまで、ナチスを追及し続けている、あの姿。あの執念。
 これが、正しい世界を打ち立てていく、平和を打ちたてていく方法であり、道であり、戦いであると私は思う。
 その点、日本はあいまいです。わざと誤解させるような教育までもさせている。
 絶対に、正しい歴史認識を、完璧に、教育をはじめ、その他あらゆる方法で教えきっていかなければ、日本人は信頼されません。
 信頼のないところに、平和は生まれない。
 過去をごまかして 「日本人の誇りをもて」 と叫んでも、世界から信頼されずして、本当の誇りなんかもてるはずがない。
 ………
 名誉会長 大事なのは 「思想」 です。間違った思想が、不幸の元凶です。
 周恩来総理は言われた。
 「中国はたしかに、日本に踏みにじられた。しかし、私たちは、日本の人民を恨まない。日本の人民も、中国の人民と同じく、ともに日本軍国主義の犠牲者だからです」
 だからこそ、「反・軍国主義」 の創価学会をこよなく信頼してくださった。
 だからこそ、「反・軍国主義」 の一点で、日本と中国の民衆が連帯すべきです。
 特に、日中の青年と青年が、「心」 と 「心」 を結ぶことです。
 そのためにも、まず日本の青年が、正しき歴史観をもつことです。中国を尊敬し、中国の大恩に感謝する心をもつことです。
 ………
 名誉会長 経済の交流も大事です。政治の対話も大事です。
 しかし、根本に 「心」 がなければ、真の友好はできない。
 そして 「未来永遠に、中国と友好関係を結んでいく」 以外に日本の生きる道もない。日本は、中国をはじめ アジアから本当に信頼される国になって、初めて 「平和国家」 となれるのです。
 ゆえに、そのためにも、過去の歴史的事実を正確に知り、形式的でなく、中国の人たちの 「心に届く」 謝罪をしていかなければなりません。それが大前提です。
 「心」 が通わなければ、何をしても、ぎくしゃくして、うまくいくわけがない。
 ………
 名誉会長 ともあれ、トインビー博士は語っておられた。
 「中国こそ、世界の半分はおろか世界全体に、政治統合と平和をもたらす運命を担っていると言える」 と。
 “米中国交の立役者” アメリカの キッシンジャー博士(元国務長官)も、ニューヨークで再会した際に、私に言われた。
 「中国はさらに力をつけるでしょう。アメリカと中国は、もっと強力な絆を結ぶべきです」 と。
 アメリカと中国と、二つの大きな軸を中心に、「アジア・太平洋の時代」 が幕を開けると考えられる。日本が 「国家主義」 などの時代遅れの考えに染まると、米中の 「谷間」 になって孤立し、世界から相手にされない国になってしまう。
 米中の谷間になるのではなく、東洋と西洋の両大国の 「橋渡し」 をする日本でなければならない。それが 「世界平和」 への日本の大きな貢献です。
 ………
 名誉会長 「国家主義」 ではなく、「人間主義」 で、全世界と友好を結ぶのです。友好を結ぶのが、一番の安全保障です。   
 戸田先生は、「資源なき日本は、人材を資源にせよ」 と言われた。
 優れた人材が各分野に育ち、世界に打って出て、その地、その国のために尽くしていく。そういう国を、どこだって、攻めるわけにはいかない。
 そのような、世界の民衆から尊敬され、称賛される国にならなければいけない。
 ………
 日中の青年が手を取り合って、人民に尽くしゆく ―― そんな二十一世紀を、今は亡き周総理夫妻も、眼を細めて喜んでくださることでしょう。

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No title

大阪の古田です。この間はご家庭の事で大変な中、ご返事ありがとうござい
ました。安倍総理夫妻が共に戦前の国家神道を復活させれば今の若者がしっかりすると考えて、園児の頃から教育すればいいと思っているのだとすれば時代錯誤もいい所です。自民党には神道政治連盟なる組織に属する議員が多く、連立する公明党もさぞや大変だと思います。国家神道の側からすれば創価学会は不倶戴天の敵に見えるでしょうし。実に馬鹿馬鹿しいですが。
小泉総理の時に比べ、安倍総理は何処か公明党を隅に追いやろうとしている感がしてましたので。長文失礼しました。

Re: No title

 コメント有り難うございました。

 私も安倍総理の考えには、少々危惧の念を持っています。
 森友学園の園児たちに、教育勅語を再誦させていると聞き、驚いています。
 児童の幸福のための教育ではなく、国家のための児童教育、これが現時点でも残っているのですね。
 国家神道(靖国)思想の根深さには、慄然とする思いです。
 これがために、牧口先生が獄中で殉教されたことを、決して忘れてはならないと思います。
 
 その他、国有地払い下げの疑惑の問題もあります。
 公明党も、連立を組んでいるからいって遠慮することなく、正すべきはしっかりと正して貰いたいと思います。

No title

大阪の古田です。

「実に馬鹿馬鹿しい」は私としても軽はずみな言い方でした。創価学会の側からしても牧口常三郎初代会長を国家神道により失っている。言論戦による追撃の手を緩めてはいけない相手に違いはありません。軽率な表現をこの場を借りてお詫び致します。
プロフィール

谷 建二郎

Author:谷 建二郎
 
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北九州市小倉北区に在住 81歳
日蓮仏法と創価思想に関する私の教学的随想

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