本迹相対(迹門の一念三千・何ぞ…)

 法華経の迹門において、永不成仏と嫌われた二乗(声聞・縁覚)の者たちの成仏が可能となりました。しかし、それは、本門の発迹顕本がなされた眼から見れば、迹門の一念三千や二乗作仏は、根拠のない甚だ頼りのないものになるのである。
 これらのことを、日寛上人は 「本無今有」 と 「有名無実」 の二つをもって解釈いたしました。

 「本無今有(ほんむこんぬ)」(本無くして今有り)とは、久遠の本地を顕わさないで、今日の垂迹のみを示すことである。
 「有名無実(うみょうむじつ)」(名ありて実なし)とは、名のみあって、その事実がないということである。

 『三重秘伝抄』 に、「問う迹門の一念三千・何ぞ是れ本無今有なるや。
 答う既に未だ発迹せざる故に今有なり、亦未だ顕本せず豈本無に非ずや、仏界既に爾(しか)り九界も亦然なり」(六巻抄・34P)
 とあります。

 迹門では、発迹してないのに一念三千が説かれた(今有)と言っている。また、久遠実成という仏の本地を顕わしていないから(本無)、始成正覚という垂迹の立場がまだ残っている。
 ゆえに、迹門で二乗作仏や一念三千が説かれたと言っても、本当はその根拠が伴って無く、理論だけが先行していただけのことである。
 この顕本とは、「仏界既に爾り九界も亦然なり」 ということで、仏界の顕本は九界の顕本を伴ない、九界の顕本は仏界の顕本と一体である。どちらか一方だけの顕本はあり得ないのである。
 『開目抄』 に、「九界も無始の仏界に具し仏界も無始の九界に備りて・真の十界互具・百界千如・一念三千なるべし」(197P) と仰せです。
 
 日寛上人は、『十法界事』 を引かれて 「迹門には但是れ始覚の十界互具を説きて未だ必ず本覚本有の十界互具を明さず故に所化の大衆能化の円仏皆是れ悉(ことごと)く始覚なり、若し爾らば本無今有の失(とが)何ぞ免(まぬが)るることを得んや」(421P) を文証として示されています。

 迹門では、化導される大衆(九界)も、化導する仏も、始成正覚という生命観、成仏観の域を出ていません。ゆえに、二乗作仏を説き示すことによって、十界互具という理念が説かれましたが、そこには “始覚の十界互具” という条件が付いております。
 大聖人は 「爾前・法華相対するに猶爾前こわき上・爾前のみならず迹門十四品も一向に爾前に同ず」(198P) と仰せられております。
 迹門といえども爾前の立場の成仏観のもとでは、今の自己の存在を否定したところに(九界を抹殺して)、架空の仏を想定した別の国土に、成仏を求めてしまうことになります。
 例えば、迹門では迦葉尊者は名号は光明如来、国名は光徳、劫名は大荘厳と名づけられたが、現在の娑婆世界とは何の関係もないものだ。権教の浄土宗の阿弥陀如来や西方極楽世界なども、まさに架空の夢物語に過ぎないのである。

 次に、「問う迹門の一念三千を亦何ぞ有名無実と云うや、
 答う既に真の一念三千も顕われずと云う豈有名無実と云うに非ずや、故に十章抄に云く 『一念三千の出処は略開三の十如実相なれども義分は本門に限る、爾前は迹門の依義判文・迹門は本門の依義判文なり』 等云云、迹門は但文のみありて其の義無し豈・有名無実に非ずや」(六巻抄・34P)
 とあります。
 
 迹門の段階で、一念三千という言葉、名前はあるけれども、発迹顕本していないから、真の一念三千も明かされていない。真の一念三千でないと言うことは、「有名無実」 で実質を伴っていないと言うことである。
 天台大師が一念三千の出処としたのは迹門方便品の十如実相であったけれども、その本義はあくまでも、“本門に限る” のである。
 ここで、「依義判文」(義に依って文を判ずる)という言葉が出てきます。

 「迹門は但文のみありて其の義無し」 と、“其の義” とは、本門にあるわけです。迹門で一念三千と言ったのは、本門の立場から 「依義判文」 したからである。迹門の文には “百界千如” までしか説いていない。
 本門では久遠実成の顕本があり、十界の常住、国土世間の常住が説かれ、真の一念三千が顕れた。この本門の “義” を踏まえて迹門を見たときに、そこに一念三千を読み取ることが出来るということである。
 これは、有名無実の釈迦仏法の “死の法門” でも、日蓮大聖人の仏法の最高の視点・意義から見たときに、ことごとく、これらの法門も活かすことができるのである。
 「若し会入の後は猶蘇生の如し故に活の法門と云うなり」(六巻抄・26P) と。 

テーマ : 仏教・佛教
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谷 建二郎

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北九州市小倉北区に在住 81歳
日蓮仏法と創価思想に関する私の教学的随想

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