「事の戒壇」と「事の戒法」

 日蓮大聖人は、『三大秘法抄』 において、「戒壇を建立す可き者か時を待つ可きのみ事の戒法と申すは是なり」(1022P) と仰せになり、その名称を 「事の戒壇」 と云われずに 「事の戒法」 と仰せになられています。
 今まで私は、「事の戒法」 をそのまま 「事の戒壇」 であると認識していました。この点は、別段に間違っているとは思っておりませんでしたが、しかし、わざわざ 「事の戒法」 と云われているのには、何か訳があるのだろうか と思いました。

 そこで大聖人は、御書に どのように仰せられているのだろうかと思い、検索して見ました。
 まず 「戒法」 で検索しましたら “5件” ありました。比較的に 「三大秘法抄」 等の重書にありますが、“懺悔滅罪の戒法” 等と仰せられているほかは、内容の詳しい説明はありません。

 「戒壇」 では、“29件” ありました。その殆んどが、小乗の戒壇や伝教大師の 「迹門の戒壇」 のことであって、末法の 「本門の戒壇」 については、2~3の御書にしかありません。それも戒壇という名目のみで、説明は 「三大秘法抄」 のみであります。
 このように、“戒法や戒壇” の御説法は、三大秘法の他の “本門の本尊や題目” と比べると非常に少なくなっています。それは末法においては、“戒や戒壇” の必要性・重要性が無くなって来ているからだ と思われます。

 「末法無戒」 と云われますように、今どき戒律を持している者なんか 一人もいないのである。
 『四信五品抄』 に、伝教大師未来を誡(いまし)めて云く 「末法の中に持戒の者有らば是れ怪異なり市に虎有るが如し此れ誰か信ず可き」云云。(341P) と云われています。

 そもそも 「戒」 とは、「防非止悪(非を防ぎ悪を止める)の義」(744P) である。
 「身・口・意」 の三業の悪を止めて、一切の不善を禁制して心身を正し、安心立命の境地(成仏)を得るためである。小乗・権大乗教では、戒法が重視され、戒を守らなければ破戒と称して、成仏できないとされた。
 「戒」 には小乗教の五戒、大乗教の十重禁戒等々多数あるが、基本的な・初歩的な五戒(不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒戒)でさえ、末法の衆生には実践することは不可能である。 

 そのような末法の無戒の不成仏なる衆生を憐れんで、日蓮大聖人は戒律を受持しなくても、成仏できる方途を顕わしてくださいました。
 『観心本尊抄』 に、「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す我等此の五字を受持すれば自然に彼の因果の功徳を譲り与え給う」(246p) と。
 『教行証御書』 に、「此の法華経の本門の肝心・妙法蓮華経は三世の諸仏の万行万善の功徳を集めて五字と為せり、此の五字の内に豈(あに)万戒の功徳を納(おさ)めざらんや、但し此の具足の妙戒は一度持つて後・行者破らんとすれど破れず是を金剛宝器戒とや申しけんなんど立つ可し」(1282P) と仰せられている。

 南無妙法蓮華経の御本尊を信受するところに、すべての仏・菩薩の万戒の功徳が納まるのであるから、我われにとって御本尊の受持・唱題が、唯一の 「末法の戒」 となります。
 『御義口伝下』 に、「法華経を持ち奉る処を当詣道場と云うなり此(ここ)を去つて彼(かしこ)に行くには非ざるなり、…… 今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者の住処は山谷曠野(せんごくこうや)皆寂光土(みなじゃっこうど)なり此れを道場と云うなり」(781P) と仰せです。

 御本尊を受持し題目を唱える処(道場)は、それがそのまま 「持戒」 であり、それが山谷曠野・どこであっても、「戒壇の義」 が成り立つのである。
 したがって、信受すべき御本尊のある場所が、即 「戒壇」 となる。すなわち、「本門の本尊」 所住のところが 「本門の戒壇」 となるのであります。
 ゆえに、像法・多造塔寺堅固の時の鑑真和尚や伝教大師の戒壇のような、特定の本尊を以て特定の場所に堂舎を建てる形式の 「事の戒壇」 なるものは、末法の大聖人の仏法には必要ないのであります。

 『観心本尊抄』 に、「地涌千界の大菩薩を召して寿量品の肝心たる妙法蓮華経の五字を以て閻浮(えんぶ)の衆生に授与せしめ給う」(250P) と仰せです。

 したがって、我ら皆・地涌の菩薩の自覚に立ち、御本尊に題目を上げ、何処にあっても “妙法蓮華経の五字(御本尊)を以て閻浮の衆生に授与せしめ給う” ことが、唯一の 「持戒」 であり、すなわち、大聖人仰せの 「事の戒法」 となるのであります。
 ここに、「事の戒壇」 の建立よりも、「事の戒法」 すなわち、戒法である題目を唱えて、仰せの通りの 「妙法蓮華経の五字を以て閻浮の衆生に授与せしめ給う」 ことの実践(折伏すること)の方が、日蓮大聖人の御心であり、御聖慮であると思います。

テーマ : 創価学会
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

谷 建二郎

Author:谷 建二郎
 
FC2ブログへようこそ!

北九州市小倉北区に在住 81歳
日蓮仏法と創価思想に関する私の教学的随想

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 創価学会へ
にほんブログ村


仏教 ブログランキングへ

最新記事
カテゴリ
最新コメント
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR