「21世紀文明と大乗仏教」を読む(3)(「平和創出の源泉」)

 池田先生は、“「戦争と革命の世紀」の悲劇は、人間の幸・不幸の決定的要因が外形のみの変革にはないという教訓を残した” と述べられ、従って21世紀にあっては、“こうした生死観、生命観の内なる変革こそ第一義となってくるであろう” と確信され、その上で “大乗仏教(日蓮仏法)が二十一世紀文明に貢献しうるであろう” と考える視点を、下記の三点に要約されて講演されました。

 その三点とは、第一に 「平和創出の源泉」、 第二に 「人間復権の機軸」、第三に 「万物共生の大地」 という三視点であります。私はこの三つを見まして、先生は 「妙の三義」 を展開されて講演されたのではないのかなぁ と思いました。

 「妙の三義」 とは、① 「妙と申す事は開と云う事なり」 ② 「妙とは具の義なり具とは円満の義なり」 ③ 「妙とは蘇生の義なり蘇生と申すはよみがへる義なり」 (法華経題目抄より・943P) のことであります。
 そこでもう少し、よく知りたいと思い 『仏教哲学大辞典(第三版)』 で 「妙の三義」 という項目を、探して見ましたが有りませんでした。次回の改訂版を出す時には、是非とも入れて頂きたいと思います。

 一番目の 「平和創出の源泉」 でありますが、仏教が平和のイメージに彩られている宗教であり、それは押しなべて、暴力を排し、対話や言論を徹底して重視しているからであると述べられています。  (21世紀文明と大乗仏教・21P)
 そして平和の反対、争いごとの起こる原因として、釈尊の 「一本の矢」 の話をされています。

 釈尊の言葉に 「私は人の心に見がたき一本の矢が刺さっているのを見た」 とあります。 「一本の矢」 とは、一言にしていえば “差異へのこだわり” といってよいでしょう。 当時のインドは、大いなる変革期で、悲惨な戦乱が相次いでいました。 釈尊の透徹した眼は、その争乱の根底に、何よりも部族や国家などの差異へのこだわりを見いだしていたはずであります。
 ………
 「民族」 であれ 「階級」 であれ、克服されるべき悪、すなわち 「一本の矢」 は、外部というよりまず自分の内部にある。 ゆえに、人間への差別意識、差異へのこだわりを克服することこそ、平和と普遍的人権の創出への第一義であり、開かれた対話を可能ならしむる黄金律なのであります。 また、そうあってこそ、相手の性分や能力に応じて法を説く “対機説法” という自在な対話も可能なのであります。
  

 人が争う原因は、人の心に突き刺さった 「見がたき一本の矢」 であった。その 「一本の矢」 である “差異へのこだわり” を克服することが、平和創出のための最大の要点なのであります。
 人々はあまりにも、国籍・人種・宗教・地位・財産等々の “差異へのこだわり” の心が、民族・国家権力や宗教権威等に利用され、敵愾心をあおられ、自分と違う他者に対して、異端者として嫌悪し排除しょうとするのである。
 それゆえに、国家・民族間の紛争が起きてくる要因となるのである。
 
 先生は、“「一本の矢」 は、外部というよりまず自分の内部にある” と述べられ、“差異へのこだわりを克服することこそ、平和と普遍的人権の創出への第一義である” と、それを可能ならしむるものは “相手の性分や能力に応じて法を説く 「対機説法」 という自在な対話” の重要性を述べられています。

 その実例として、釈尊が隣国を征服しょうとする マカダ国の大臣に対し、戦争への意図を、言論による説得で思い止まらせております。
 日蓮大聖人も、邪悪な権力に対して一歩も退かず、竜の口・佐渡の法難においても、もっぱら言論・非暴力に徹して大勝利しました。
 
 「智者に我義やぶられずば用いじとなり」(「開目抄」御書232頁) と 。 まことに言論にかける信念の強固なるや金剛のごとし、であります。
 もし、こうした対話の姿勢が徹底して貫かれるならば、対決のおもむくところ、対立ではなく調和が、偏見ではなく共感が、争乱ではなく平和がもたらされることは間違いない。 けだし、真の対話にあっては、対立も結びつきの一つの表れだからであります。


 こうした 「真の対話」 があってこそ、「平和創出の源泉」 になり得るのである。
 そのためには、釈尊のような完成された人格の広大な境涯が、あらゆる ドグマや偏見、執着から解放され、「開かれた心」 による 「開かれた対話」 によって 「世界の平和」 が実現するのであります。

 実際に池田先生は、日中国交回復に尽力しました。また当時、中ソ間は一触即発の関係にあった。
 そのような状況の中、ソ連の コスイギン首相、中国の鄧小平副総理、米国の キッシンジャ―国務長官 らと会談し、「真の対話」 によって 「世界の平和」 の実現に貢献いたしました。
 現在、創価SGI は、世界192ヵ国の民衆と連帯し、「平和・文化・教育」 の運動を展開して、世界広宣流布の大願成就を目指して戦っています。 

テーマ : 創価学会
ジャンル : 学問・文化・芸術

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龍ノ口法難が対話?。

はじめまして。読書人といいます。春秋社刊の『シリーズ日蓮』を読んで日蓮に興味を持ちました。さて、龍ノ口法難が対話だったとは、どのような事なのでしょうか?。教えて頂ければ幸いです。

Re: 龍ノ口法難が対話?。

 はじめまして。コメント有り難うございます。

> 龍ノ口法難が対話だったとは、どのような事なのでしょうか?

 私のブログの「日蓮大聖人も、邪悪な権力に対して一歩も退かず、竜の口・佐渡の法難においても、もっぱら言論・非暴力に徹して大勝利しました」のところを読まれてのご質問だと思います。

 大聖人は “竜の口法難” に際し、従容としてしたがって殺されたのではありません。
 幕府権力に、真っ向から反対し戦い、生きて大勝利しました。
 武器を取って戦ったのではありません。もっぱら「言論」を武器に換え破折し、勝利したのです。
 その根底には生命論的に、平左衛門の地獄界・修羅界と、大聖人の仏界との大闘争であり、既に、勝敗は決していた分であります。
 竜の口法難について、上記のような説明不足がありまして、ご迷惑をおかけして済みませんでした。

 したがいまして、拙ブログのカテゴリーの “四度の難” のところから「竜の口の法難・頸の座・発迹顕本」の項目をお読みくだされば、幸いに存じます。
 今後とも、宜しくお願い致します。

龍ノ口法難の事

谷さん、ご返事有り難うございます。
龍ノ口法難の時には、無暴力で抵抗し大勝利したとの事ですが、日蓮が南条兵衛七郎に与えた遺文には、小松原での襲撃事件について、

 弟子一人は当座にうちとられ、二人は大事のてにて候。自身もきられ、打たれ

とあります。これは、敗北と言えないでしょうか?。また、この遺文の少し前には、
 
 ものヽ要にあふもの三四なり。

とありますが、これなどは、無暴力の対話による抵抗どこらが、暴力には暴力で抵抗したかったとの思いが感じられますが、谷さんはどの様にお考えでありましょうか?。

Re: 龍ノ口法難の事

 小松原の法難について

> 自身もきられ、打たれとあります。これは、敗北と言えないでしょうか?。
> これなどは、無暴力の対話による抵抗どこらが、暴力には暴力で抵抗したかったとの思いが感じられますが、

 小松原の法難を、敗北とか、暴力で抵抗したかったとか、そのように貴兄はお考えですか?
 暴徒からの降りかかる火の粉を、打ち払ったことを暴力主義とでもいうのでしょうか?
 その様な上辺だけの現象を見て、仏法に優劣をつけることは、間違いの本になります。

 たとえば、信心していても、事故に遭ったり、病気で死んだり、会社を首になったり、色々な罰や損な現象が起こります。
 そこで、御本尊を疑って退転すれば、敗北者になります。
 反対に、ますます信心強盛に広布に戦い行く人は、真の勇者であり、大勝利者であります。
 以上のことを、お考えになられて、ご判断ください。 

ご返事

失礼しました。
龍ノ口の法難が大勝利だとしたら死者の出てしまった小松原法難は敗北になるのかな?と思って書きました。また、小松原法難の時は、非暴力での抵抗では無かったと推測します。多数で刀で切りかかってくるものに、多数の刀で立ち向かうのは、当然だからです。

難があるのは正法の証拠

ただの通りすがりの独り言ですので、お二方とも聞き流してくださって構いません。

もし小松原の法難で敗北なら、熱原の法難は大敗北ですね。
しかし、大聖人は、「出世の本懐」とまで言ってくださった。
その心とはなんでしょうね。

Re: 難があるのは正法の証拠

> しかし、大聖人は、「出世の本懐」とまで言ってくださった。
> その心とはなんでしょうね。

 法華経の方便品に「出世の本懐」とは、一大事の因縁であると説かれています。
 簡単に言えば、一大事とは御本尊のことであり、因とは衆生が仏を渇仰する機根であり、仏はこれに応じて出現するので縁という。
 この「一・大・事・因・縁」の五つがすべて揃って、はじめて「出世の本懐」になると思います。

 熱原の農民信徒たちの大難に負けない死身弘法の信心を御覧になって、広宣流布の大願成就をご確信なされた。
 すなわち、一切衆生の救済こそが、大聖人の御心であり、御本懐であると思います。
プロフィール

谷 建二郎

Author:谷 建二郎
 
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北九州市小倉北区に在住 81歳
日蓮仏法と創価思想に関する私の教学的随想

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